FUKUROUのインタビュー、記念すべき第一回目は、『きのうちふるぎ、(てん)』の店主、木内颯太さんにお話を伺いました。
木内さんは、秋田市保戸野で「AKITA “KARA”」の運営に携わり、秋田からワクワクする未来を創っていくコミュニティ形成に取り組まれています。
そしてご自身は『きのうちふるぎ、』で古着の販売、秋田県内にてポップアップでの出店、トータルコーディネート・パーソナルカラー診断などを行っています。

そもそもなぜ古着屋さんを始めようと思ったんですか?
なんかね、絶対古着屋さんやりたいってわけじゃなかったのよ。でももともとファッションが好きで…。
藤木っていう秋田から一緒に始めた子がいるんだよね。この子がきっかけ。「木内、ファッション教えてほしい」って言ってくれて。「この服は似合わない」「この服は似合う」ってはっきり教えて、それが一番最初のトータルコーディネートだった。そのときに藤木が、「俺こういう服似合うんだ」「自分にちょっと自信が持ってたし、 これで出かけたりしたい」「木内、こういうのを仕事にしたら?」って言ってくれたのがすごい嬉しくて。
パーソナルカラー診断なども来た人に新しいチャレンジをしてもらうために始めたんですか?
そうそう、新しい自分探し、チャレンジみたいな。自分の「似合う」を知ってると、 服も長く使えるじゃん。選ぶ感覚を一緒に勉強することで、服を気に入った状態でずっと長く使えるから。一個の大事にしてることかな。
個人的な話に戻るけど、古着屋さんって、店員さんもちょっと話しかけづらい雰囲気で、お店に入りづらいイメージがすごいあって。
俺大学茨城なんだけど、茨城の古着屋さんって空間も広くて、すごい素敵な空間にきれいに揃えてあって。それで店員さんが「木内くんまた来たの?」とか「この前これ買ってたよね?」とか覚えてくれてて、なんか温かいコミュニケーションをとってくれるんだよね。スタッフさんと仲良くなって町の美味しいごはん屋さんを教えてもらうみたいな。それってなんか素敵じゃん。町にお気に入りの古着屋さんがある。そのスタッフさんに会いに行きたい。
そこから繋がっていくみたいな。服を通じてそういう出会いが生まれるのはすごく素敵だなと思います。
そう、そういうのすごい好きなんだよね。
買って終わりじゃない。悲しいじゃん、それって。せっかく物がいろいろ繋げてくれることってたくさんあるから。
本当にそう思います。 この前『きのうちふるぎ、』で買った服を着て集まるイベントを開催されていたじゃないですか。ああいう場ってすごく素敵だなと思って。買って終わりじゃなくて、 そこで買ったっていう思い出も残るし。物だけじゃなくて、その場所も価値になって…。
そう。空間、空気みたいなのが、すごい価値になる。
最初からそういうお店を作りたいなって考えていたのですか。
そうだね。 だから優しい古着屋じゃないけど。『きのうちふるぎ、』が全部平仮名なのも、優しいみたいなイメージ。店の白い色もそうだね。
ファッションとかってさ、結構孤独感を感じるというか。古着屋さんで一人で選んだりしても、この場所にいていいのかな、みたいな。そういうのが「もったいないな」って思ったから、ファッションが分からない人とか、古着屋さん興味あるけど行ったことない人たちも、居心地のいい古着屋さんを作りたいなと思って、始めた。
実際にそういうお店になっているなと感じますか?
思う思う。『きのうちふるぎ、』をきっかけに、『秋田~』に来るようになって、一緒に仕事をしようとかもあるし。ウェディングプランナーになりたいとか、ゲストハウスやりたい、 みたいな人も。より深い関係性になって、それで仲間になってる。

すごく素敵です!
そう。きのうちふるぎ店が繋げてくれた関係性が俺も好きで。
そういうのもまた秋田だからできる、っていうか。最近、秋田の雰囲気が素敵だな、と思います。みんな人の繋がりを大事にしてる感じがして。
そういうのを求めてる人って多い。SNS社会で人との距離が離れてしまったから。秋田にずっと住んでる人たちは、職場の人と、 地元の友達と、家族から関係性が増えない。しかも、県外から来て友達がいないみたいな人も『きのうちふるぎ、』に来てくれるし。
秋田はそういうサードプレイスが求められてる。
そう。あと、『秋田~』でもよく言うんだけど、秋田のイベントって意識高い人の取り合いになってるんだよね。そうじゃない人たちに向けたイベントが、秋田にとって一番いいんじゃないかって思ってて。
古着店もそんな感じだね。古着好きな人はもちろん来てくれたら嬉しいけど、そこは俺がやらなくていいなって思ってて。ファッション教えてほしいとか、古着ちょっと着てみたいけど行ったことないとかっていう人が来れるような場所になったらいいな。ファッションを気軽に楽しめる場所を作りたいなって思ってる。
取り扱ってる服のコンセプトは自分で考えていますか。
今、すごい言語化したほうがいいなと思って。
ー神奈川県真鶴町が制定した「美の基準」*についての話を伺いー
自分の中の、『きのうちふるぎ、』の「美の基準」みたいなのを、言語化して服を選びたいなって、最近は思ってて。
※「美の基準」:神奈川県真鶴町で、開発などの変化に際してもこの地の生活風景を守っていくために1994年に町によって制定されたデザインコードブック。
それはなぜですか?
古着を買い付けてるところって国内の古着の卸業者さんなんだけど、そこで一個ずつ選んでるんだよ。それも人との繋がりじゃないけど、「この服は藤木が似合いそう」とか、人の顔を思い浮かべながら、一個ずつ選ぶ。ヨーロッパの古着だったら、汚れを綺麗に取って、傷ついたりボタンが取れたら自分の可愛いボタンを付ける、みたいな文化があるから。そういうのも、『きのうちふるぎ、』のコンセプトと合ってるから、そういう古着選んだりとか。
面白い!
けど今は、 結構俺もときめきすぎてしまって(笑)。買いすぎちゃうんだよね。
物を大事にしたいっていうコンセプトなのに、 大量に買い付けて使われない物が倉庫にたくさんあったら、 めっちゃもったいないし、おかしいじゃん。だから、これからは、一点一点の服の物語を深掘って選んでいく。今の300着くらいの仕入れを、半分にする。で、一点一点物語にする。
例えば、昨日売れたやつとかだったら、くすんだ青の白っぽいニットなんだけど、 毛玉出ちゃうじゃん、ニットって。でもその毛玉が、雪っぽく見えるとか。そういう、汚れとか傷とかも、1個の物語。
あと、このズボン、 破けちゃったんだけど。 この前アウターも破けちゃって。薄手のアウターなんだけど、ロゴとか服の色に合わせて、直し跡が分かるように直す。
金継ぎみたいですてきですね。
そうそう。それが逆にかっこいいみたいな。そういうのを大事にしてるから、それとか「美の基準」的なのを今考えてる。俺だったら、古着って汚れがあったり傷があったり、誰かが使ったものだけど、でも物語があったり、温かいもの。使われなくなって捨てるんじゃなくて、 また違う誰かに渡ったらすごい喜んでくれる。
そうですよね。
だから俺の着なくなった服とかも、藤木とかにあげてたんだよ。そしたらめっちゃ喜んでくれて。使わないものなのに、人が喜んでくれるってことは、服ってすごい素敵な循環を生み出せるんじゃないかな、っていう風に思ってた。
そんな古着の格好よさに共感する人は増えていると思いますか?
増えてる感じがするね。昔、俺が高校生の時なんて、古着がメジャーじゃなかったから。この4,5 年ぐらいは、だいぶメジャーでポップなものになったけど。 社会的にもサスティナブルみたいなね、今そういう流れもあると思う。結構、ハイブランドの新品作ってるブランドとかも、 ヴィンテージ加工とか、あえてするから。ぐらい今、ヴィンテージがすごいブームというかね。
木内さんはゲットした古着一点一点を覚えてますか?
覚えてるよ、全然覚えてる。この服が誰に届いたとかまで、結構覚えてると思う。結構コミュニケーションをとって服を届けるから丁寧に。結構覚えてる。その人と話したこととか。

確かに、それも良いなって思います。きっと覚えてくれてる。
きのうちふるぎ、は秋田県内のいろんなところでポップアップをされてるじゃないですか。それはどういう意図なのかなって。
そもそも、俺が同じところにずっといるのが具合悪くなるとか苦手っていうのもあるけど(笑)。お店で待ってるだけじゃなくて、みんなに会いに行くみたいな。ポップアップの時にしか会えない人もいるし、初めましての人も結構来てくれるから。
確かにポップアップでいいと思ったお店には直接行ってみたいな、と思います。
あと古着もさ、出会いじゃん。なんか角館だったらさ、角館で小さな旅をして、そこで出会った古着みたいな。その思い出も一緒に、この服と出会った場所だなみたいな風に思ってもらいたいから、そういった意味でポップアップはすごい俺は好き。ここの場所で買ったなと。
※角館:秋田県仙北市に位置する町。
本当に古着のその一期一会な感じも私はすごく好きです。
ファッションが好きになったきっかけは何だったんですか?
高校の時の彼女。それまでは部活ばっかりやっていて服には全然興味がなかったんだけど、彼女に言われたことがきっかけでいろいろ調べていくうちに楽しくなっていった。そのときに自分も、何着たらいいかわからないことがすごくコンプレックスで、だからそういう人たちの気持ちがすごいわかるの。だからそういう人たちに寄り添える場所をつくりたいと思ったかな。
(鷲田清一さんの本を勧めてくれて)
めっちゃ好きだと思う
ありがとうございます。
次に木内さんの、将来『きのうちふるぎ、』がこういう形になっているといいな、こういう部分が続いていったらいいな、という想いについて伺いたいです。
今は間借りをしてるんだけど、将来は自分の店舗をもちたいかな。まちに開いて関係性が生まれるような機能をつけたい。最初に描いていたのは、泊まれる古着屋かな。真鶴出版みたいな、二階に泊まれて、一階では古着が見れるような。そうすると、旅の思い出として古着に出会えたり、泊まった人たちと常連さんがここで混ざり合って関係性が生まれていったり。
※「真鶴出版」:https://manapub.com/
それすごく素敵ですね。
ゲストさんといっしょに、地元のお店に自分が連れて行って紹介したりしたい。一度盛岡にあるゲストハウスに泊まったことがあって。その時他のゲストの人たちと目の前にある酒屋さんでお酒を飲んでたら、途中で地元のおじいちゃんおばあちゃんが混ざったりとか、そのままおすすめしてもらった居酒屋に行ったりとか、帰ってもまたみんなでテレビ見ながら話したりとか。そういうのめっちゃいいじゃん。真鶴の本にも書いてあったけど、絶景とか、景色とか場所とかももちろんそうだけど、一番は人。この人と出会ったからこの場所に帰ってきたい、みたいな。そういう場所になれたらな、って思うから、町としての古着屋さんだけど、秋田の楽しみ方とか秋田での人とのつながりとかも大事にしながら古着屋を一緒にやっていきたいな、と思う。
確かに店舗があるとそこにきのうちさんがいる、みたいな安心感にもつながりますね。
そう、自分のカルチャーみたいなものを持てるし。そういうつながれる機能を持ちたいな、と思う。ただ服を販売するだけだったら、別に全然やらなくてもいいなって思う。
そういうことが結局買った服を大事にすることにもつながりますよね。
そうそう。そこで買った服でまたここに戻ってくる、みたいな。
一度インスタで、古着とは無縁だと思っていた自分がきのうちふるぎ、にでって服のストーリーを紡いでいく楽しさに気づいた、って書いてくれて、それめっちゃ嬉しかったね。
あとやりたい企画もう一個あるんだよね。みんなのお気に入りの服を〜「から」に展示して、その想いを書いてもらう、みたいな。深い理由はいらないから、そういう想いを書いてもらいたい。
ファッションっていうスコープで見たときに、どんなカルチャーが根付いていってほしいですか?
今はインターネットで流れてきたものを買うことも一般的になってるけど、昔は、ファッションのカリスマ店員みたいな人がたくさんいたんだって。そういうのを増やしたいな。実際に自分が行って手に取る楽しさを知ってもらったりとか、その人に会いに行きたい、その人からいつもとちょっと違った自分を教えてほしいみたいな。あと、直す文化は広がったらいいな。直す選択肢があるってすごい豊かなことだな、と思う。
直す選択肢を知らずに捨てちゃう人も多い気がしてもったいないな、と思います。
うん。もったいないと思う。だから古着の回収BOXを置いてタンスにある眠った服を掘り起こしたりもしようと思ってるんだよね。
そういうカルチャーが秋田から広がったらめちゃくちゃ素敵。
古着を直したり、直し方を教えるイベントみたいなものは考えているんですか?
やりたいなと思ってる。倉庫にミシンとかおいて、倉庫解放デーの時にお客さんに見てもらうことで直せるんだ、っていうのを知ってもらいたい。
前に来てくれたお客さんがお直しをやっている方で、そういう方と一緒にできたらいいかな、っていうのは考えてる。
またそうやって関係が生まれていくのが素敵ですね。
本当に、きのうちふるぎ、さんでこれからどんなことが始まるのか私も楽しみです!
ありがとうございました。
インタビュアー:井田
文字起こし:井田、兼頭
